大きなトーナメントのバブル直前で AA をディールされた状況を想像してみてください。 スタックは少なく、アグレッシブに攻めてスタックを増やそうとする前に、入賞するまで耐えることを考えています。
ほとんどの場合、AA をディールされたことは嬉しいですが、この状況ではそれほど喜びを感じません。 確かに、チップスタックを 2 倍にできる確率はかなりあります。 しかし、そのためには、バブルですべてのチップを賭ける必要があります。
フォールドし続ければ、かなり高い確率でインザマネーに入ることが分かっています。 AA をフォールドすることが正しいことはあるでしょうか? プリフロップでナッツを持っている時に、お金を賭けることは確実に +EV のはずです。
Chip-EV 対 $-EV
恐らく、上記の様なシナリオはよくご存じでしょう。そして正しい判断は何であるか疑問に思っているはずです。 もちろん、それは持っている正確なチップ数、トーナメントでの順位、プライズストラクチャなど、多くの要因によります。
トーナメントが上位 20 人に均等に支払うとします。 21 人のプレーヤーが残っていて、わたしたちは 2 位です。 チップリーダーがオールインし、わたしたちのトーナメントライフを賭けるよう求めてきました。 ここでは AA をフォールドすることは正しいです。 しかし、チップだけに注目すると、AA をフォールドすることがどうして正しい選択肢なのか理解するのは難しいです。 明らかにはわれわれはベストハンドを持っているからです。
以下の 2 つのトーナメント設定での EV を計算する方法を区別する必要があります。
(EV = expected value)
chip-EV
$EV
トーナメントプレーヤーはチップ-EV ではなく自分の判断の $EV だけを考慮するべきです。 chip-EV がプラスでも、$EV がマイナスであるシナリオが存在します。 上記の例でこれを説明できます。
Chip EV は、平均してチップスタックのサイズを増やせるかどうかを教えてくれます。 ポケットエースでオールインした時は、常にそうなります。 $EV は、どれくらいの頻度でより大きなトーナメントの払い戻しを平均して確保できるかを教えてくれます。 これを正しく計算するには、現在のスタックサイズだけでなく、トーナメントのペイアウトストラクチャを考慮する必要があります。
ICM – Independent Chip Model (インディペンデントチップモデル)
このような状況では、Independent Chip Model (ICM) を使用できます。 ICM は残っているトーナメントチップに金銭的な価値を割り当てて、より正確な方法で +EV の判断をすることを可能にします。
ICM の計算は複雑で、この記事の範囲外ですが、ネットでは無料で利用できる ICM 計算機がたくさん存在します。 数字を入力するだけで自動で計算されます。
基本的な例を考えて、ICM 計算機がその状況について何を教えてくれるか見てみましょう。
例:
$1000 の賞金プール。
1 - 3 位には、それぞれ賞金プールの 50%、30%、20% が支払われます。
ICM によると、各スタックサイズの $EV または金銭的な価値は何でしょうか?
これを計算するには、次のようにまず追加情報が少し必要です。à
10,000 チップがプレイ中で、残り 5 人のプレーヤーのスタックサイズは次になります。
プレーヤー 1 - 4,000
プレーヤー 2 - 2,500
プレーヤー 3 - 2,000
プレーヤー 4 - 1,000
プレーヤー 5 - 500
残っている各スタックの金銭的価値を得るには、数字を ICM 計算機に入力します。 次の結果が生じます。
プレーヤー 1 - $328.238
プレーヤー 2 - $256.797
プレーヤー 3 - $222.929
プレーヤー 4 - $126.029
プレーヤー 5 - $66.007
ICM 計算機で利用している時に気付くことのひとつは、賞金プールが頭でっかちであればあるほど、ビッグスタックであることがより価値を持ちます。 同じ数字を使用して、今度はプライズストラクチャが勝者総取りの場合を見てみましょう。 (1 位がすべての賞金を受け取り、他の人は何も獲得しません。)
プレーヤー 1 - $400
プレーヤー 2 - $250
プレーヤー 3 - $200
プレーヤー 4 - $100
プレーヤー 5 - $50
ここでの配分は持っているチップ数に比例しています。 言い換えれば、トーナメントが勝者総取りストラクチャに近づけば近づくほど、$EV 計算は chip-EV に近づきます。
上位 4 人が賞金プールのちょうど 25% 支払われる状況を想定してみましょう。そして、その時、ICM 計算機は何を教えてくれるでしょうか。
プレーヤー 1 - $245.084
プレーヤー 2 - $235.938
プレーヤー 3 - $228.357
プレーヤー 4 - $185.109
プレーヤー 5 - $105.512
それぞれの $EV 値がお互いに近づいていることが分かります。 このシナリオでは、チップリーダーであることのアドバンテージは減少します。 上位 5 人のプレイヤーのペイアウトが 20% だった場合、すべてのプレーヤーは $200 の $EV を持つことになります (プレーヤーは 5 人しかいないので)。 この例では、チップリーダーであることは完全に意味がなくなります。
ICM 実践編
しかし、これがテーブルでどのように役立つのでしょうか? 本当のお金に換算してスタックの価値を理解するで、より強固な EV 計算をすることができます。
元の質問に従って、ICM 計算機を使用して少し実験をしてみましょう。
プライズストラクチャは賞金プールの 25% を上位 4 人に配分し、5 位のプレーヤーは何ももらえません。 これはあまり現実的なシナリオではないかもしれませんが、一部のトーナメントはこのストラクチャを採用しています。 (多くの場合、より大きなイベントへのトーナメント チケットなどの固定された賞金が配分される状況) これまで話してきたように、$EV は chip-EV とかなり異なるのでこの具体的な例を選んでいます。
次のスタックを持つ 5 人のプレーヤーが残っています。20,000 チップがプレイ中です。
プレーヤー 1 – 7,000
プレーヤー 2 - 6,000 ß ヒーロー
プレーヤー 3 – 4,000
プレーヤー 4 – 2,000
プレーヤー 5 – 1,000
ご覧のように、プレーヤー 5 を飛ばす必要があるだけです。そうすれば、賞金の 25% が確定します。 賞金プールが以前と同じ ($1,000) だと仮定して、各チップスタックの $EV を計算します。
プレーヤー 1 - $243.047
プレーヤー 2 - $240.177
プレーヤー 3 - $227.935
プレーヤー 4 - $184.352
プレーヤー 5 - $104.490
SB のビッグスタックが 7,000 でオールインするシナリオを想像してみましょう。 われわれはポケットエースを持っており、残りの $6,000 でコールすることが正しいかどうか証明してみましょう。 分かりやすくするために、ブラインドは無視します。
平均して何枚のチップを得るかには興味はありません。平均して何回のコールが $EV に影響を与えるのかに注目します。 まず、対戦相手がハンドの約 7% をオールインした場合、われわれのエクイティはどうなるか見てみましょう。 (これが適正なオールインの頻度と示唆しているわけではありません。この特定の対戦相手がオールインする頻度を一例として使用しているだけです。)
ハンドレンジ | エクイティ |
88+、Ats+ KQs、Ajo | 15.38% |
AA | 84.62% |
$EV チップスタックは約 $240 の価値があることが分かりました。 つまり、15.38% の確率で $EV で 約 $240 を失い、84.62% の確率で勝利します。 しかし、いくらでしょうか? $EV の観点で考える必要があります。これを行う唯一の方法は ICM 計算機で計算をやり直すことです。
この特定のケースでは、とても簡単です。 全員のスタックの価値は、$EV で $250 になることが分かっています。 5 番目のプレーヤーが退場すると、残りすべてのプレーヤーは $1000 賞金プールの 25%、$EV で $250 相当を受け取ります。
(注記: トーナメントがここで終了しないと仮定すると、コールして勝利した後に、スタックサイズがどのようになるかを考慮して、ICM 計算機で別の計算をするべきです。 これは $EV でいくら稼ぐのかを教えてくれます。 また、この例ではオールインで負けた時に、トーナメントから退場になるので、$EV で $240 を失ったことを確認するのは明白です。 コールでバストしないと仮定すると、負けた時のシナリオの別の ICM 計算を行い、予測される $EV がどうなるかを確認するべきです。そしてオールインをコールして負けた時に失う $EV がいくらなのかを計算します。
これでコールの $EV がどうなるのか調べられる情報がそろいました。 平均的な簡素な EV 計算を構成する 4 つの重要な要素があります。
勝つ確率 – 84.62%
獲得する金額 – 約 $10 (現在の $EV スタックと $250 の差)
負ける確率 – 15.38%
失う金額 – 約 $240 (すべての $EV スタック)
これはコールの観点から言えば、よくないことが既に分かります。 数字を EV 方程式に入力してみましょう。
(勝つ確率 * 獲得した金額) – (負ける確率 * 失った金額)
(0.85 * $10) – ( 0.15 * $240)
$8.50 - $36 = -$27.5
誠に残念ながら、 ポケットエースでコールした場合、平均して $27.50 を渡していることになります! AA をフォールドすることが正しいとは、反直観的に見えるかもしれませんが、正しい状況においては、コールが間違いであることが分かります。 フォールドして、プレーヤー 5 (または別のプレーヤー) がバストするのを待つべきです。
当然、この例は幾分不自然ですし、ポケットエースをフォールドすることが、通常よい考えであると提案もしていません。 ここでの例は、トーナメント意思決定における ICM の妥当性を理解しようとするものです。
判断が難しい状況では、フォールドの $EV も調べて、コールの $EV と比較することができます。 (時にはコールはお金を失うことがありますが、平均するとフォールドよりも負けルことは少ないです) フォールドの $EV を調べるには、調整されたチップスタックと、われわれはフォールドしていくらかお金を失い、対戦相手が少しお金を得たことを考慮して、 ICM 計算を再度行います。 元の $EV とフォールドした後の $EV の差がフォールドの全体的な $EV になります。
ICM はすべてではない
ICM はさまざまなトーナメント状況を分析する理論的な方法です。 時に、ICM を頻繁に利用するユーザーは、ICM はあらゆるトーナメント状況において「完璧」なソリューションであり、それから逸脱することは マイナス $EV になるかのような印象を与えることがあります。
しかし、真実は ICM 計算は不正確であり、さまざまなタイプのトーナメントプレーヤーがたくさん存在します。 対戦相手が非常にタイトな場合、潜在的により頻繁にフォールドするべきです。 しかし、非常にルーズな場合、より頻繁にコールするべきです。 また、ほとんどの ICM 計算機は BTN または UTG であるかどうかに関係なく、スタックサイズが同じとして $EV を教えてくれます。 これは実践ではありえません。 UTG である時は、ブラインドをもうすぐ支払うことになります。 ICM はこれを考慮していません。
また、テーブルにいる時に ICM 計算をどうやって使用できるのか考えている人も恐らく存在するでしょう。 確かに、時間がかり過ぎます。 それは全くその通りです。 実際のハンドの間に ICM を使おうとするのは実践的ではありません。 ICM 計算は通常、トーナメント終了後にハンドを見直す方法として使用されます。 既に終了したトーナメントでは役立ちませんが、将来のトーナメントにおける意思決定に磨きをかけるのに役立つはずです。